SIP:お名前の発音は「サンドラ」それとも「サンドレイ」ですか。
ローレンス氏:サンドラです。
ありがとうございます。
SIP:ではサンドラ、どうすればカクテル審査員になれるのでしょうか。
ローレンス氏:それは面白い質問ですね。
実を言うと、自分が審査員にふさわしい資格を持っているのかどうかは分かりません。
ただ、私はカクテルを心から愛しています。
カクテルに対して別の視点を持つことが大切なのだと思います。
私は決して「専門家」とは名乗りません。
カクテル愛好家である一方で、バーをよく訪れる一人の客でもあり、自分なりの基準を持っています。
私たちは「バランスのとれたカクテルこそが理想である」と考えています。
そのうちに、人々が私たちを「業界で影響力のある存在」として見るようになったのだと思います。
つまり、別の視点を提供することが審査員になる理由だったのです。
SIP:カクテル審査員というのは、世間のイメージどおり華やかで楽しい仕事ですか。
ローレンス氏:いいえ、実際にはそうでもありません。
もちろん「素晴らしい仕事だ」と思われがちです。
でも実際には、世界大会などでは1日に20杯ものカクテルを審査することもあります。
しかも、それがすべてラムとライム系だとしたら、途中で味覚が麻痺してしまうのです。
それでも、出場者に真剣に向き合う必要があります。
無表情のまま審査員席に座っているわけにはいきません。
私は出場者に最高の自分を表現してほしいのです。
それは精神的にも大きなエネルギーを要します。
確かに特別で光栄な役割ではあるのですが、一口一口が実際にアルコール摂取であることも事実なのです。
SIP:では、最初の出場者と20番目の出場者、どちらが有利なのでしょうか。
ローレンス氏:どちらにもそれぞれ有利な点があります。
多くのバーテンダーは最初に出るのを嫌がりますが、その理由もよく分かります。
最初の出場者は非常に緊張するものです。
一方で最後の出場者は、それまでに全員のパフォーマンスを見られる一方で、審査員が多くの話を聞きすぎて少し疲れ始めているタイミングでもあります。
ですから、中盤で出場するのが一番いいのかもしれません。
ただ、本当に大事なのは、あなたが持ち込むエネルギーです。
最初に出ても、10番目に出ても、自信を持って臨み、自分の個性で審査員を引き込むことができれば、それがすべてです。
つまり、良い順番や悪い順番はなく、自分のプレゼンテーションにどれだけエネルギーを注げるかにかかっています。
SIP:もし失敗してしまったら、挽回はできますか。
サンドラ氏:もちろん!
実際に、多くの人が失敗してもその後に持ち直しています。
私が出場者に必ず伝えるのは「手が震えても気にしないで、それはよくあること。ミスをしても大丈夫。それよりも、そこからどう立ち直るかが重要」ということです。
そして、自分の行動を冗談めかして笑いに変えられれば、出場者自身もリラックスできますし、審査員もリラックスできます。こうした軽やかな瞬間はとても大切です。
失敗しても、それを明るさや輝きに変えられるのです。
私たち審査員も、そういう姿を見られるのが嬉しいのです。
SIP:コンペティションで勝てなかった場合、参加することにはどんな価値がありますか。
サンドラ氏:勝つことだけが成功ではありません。
これまで私が見てきた中で、大きな成果を上げている人の多くは、コンペティションで優勝していません。
その後、ブランドアンバサダーになった人もいます。
投資家と出会い、自分のバーを開くきっかけにした人もいます。
彼らはとても賢く、コンペを自分のメディアとして活用しているのです。
SIP:出場者へのアドバイスを教えてください。
サンドラ氏:常に審査員にフィードバックを求めることです。
勝っても負けても、それは構いません。ただ必ずフィードバックを求めてください。
「自分は何をしたのか?」
「どこをもっと良くできたのか?」
「なぜそこで減点されたのか?」
もちろん「正直言って、ひどかった」といった厳しいことを言うつもりはありません。ですが、必ず何かしらのポジティブな点は見つかるものです。
SIP:『ドリンク・マスター』はご覧になりましたか?
あの番組の内容は、実際の様子に近いものですか。
サンドラ氏:あれはテレビ番組用に作られているので、当然少し大げさになります。
アメリカの視聴者向けに作られていることもありますし。
ですから、演出の「過剰さ」が加わっています。
ただ、カクテルコンペティションのレベルを示すものにはなっていたと思います。
カクテルコンペティションという存在を世に広め、そこに多くの創造性が込められていることを明らかにしました。
これ以上は言いませんが(笑)。